xevra氏の誤解と瞑想の科学的根拠について

はてな村で近頃話題の瞑想について、私がもやもやしていることについて書く。
xevra氏の発言の一部を否定しているが、xevra氏本人や瞑想そのものを否定するつもりはない。私の指摘が誤りであれば、指摘し直して欲しい。

言いたいこと

もし瞑想に科学的根拠がなく、xevra氏は瞑想の効果について思い込みをしているとすると、xevra氏がやっていることは水素水のようなエセ科学を勧めているのとなんらかわらない。このことを示すために、下記2点について以下にまとめる。

  1. xevra氏の脳や意識に対する考えは一部誤っている
  2. 瞑想の効果には本当に科学的根拠があるか

私の瞑想に対する考え方

誤解を避けるために初めに言及するが、私は瞑想の効果に関する真実を知りたいと思っていて、瞑想そのものを否定するつもりはない。しかし科学的根拠が薄いと思っている。
また、実際に何日か瞑想に取り組んでみて、いい気がする、とも、いい気がするだけかもしれないとも思っている。もし本当にいいものなら、継続するために瞑想で人生がよりよくなる!という強い確信が必要だと思うので、そこをはっきりしたい。

xevra氏の脳や意識に対する考えは一部誤っている

xevra氏は瞑想を世に広めるため、その必要性を意識や無意識というキーワードを用いて定性的に説明している。しかし、その認識は誤っているところがある。自分で認知神経科学の本を引用しておきながら、その内容とは全く反対のことを言っている。

xevra氏によると、

要は意識はただの後付けのつじつま合わせの存在にすぎないという事だ。

だそうだ。意識に意味はなく無意識こそ我々の本体だ、という発言を繰り返ししている。
一方、xevra氏が上記の記事で引用している本には、全く別のことが記載されている。

実のところ意識は、無意識のうちには実行し得ないいくつかの操作をサポートする。識閾下の情報はすぐに失われるが、意識的な情報は安定している。

上記の本には明確に本文に「意識は無意識のバックシートドライバー(=自分では何もできない無用な観察者)ではない」と記載されているし、3章の冒頭の概要にも同じ趣旨の文章が記載されている。
また、3章では"アイズ・ワイド・シャット"という反応を用いた実験で、「時間をかけた熟慮には意識の関与が必須である」ことが直接的に示されている。

つまり「意識はただの後付けのつじつま合わせの存在」ではないということだ。*1そうなるとxevra氏の瞑想の必要性に対する定性的な説明も根本的に誤っていることになる。xevra氏はまともに文章を理解せず、適当な思い込みをしているという疑いさえ出てくる。そして瞑想に本当に効果があるのかとても不安になる。

瞑想の効果には本当に科学的根拠があるか

私が瞑想に興味を持ってから、その科学的根拠について少しだけ調べてみた。xevra氏本人が引用しているものも含めて下記の研究成果が見つかった。
しかしどちらも瞑想で人生がよりよくなる!と思えるような説得力はない。

普段瞑想をしている人、していない人の脳の構造的な違いに関する研究

言及したい研究の1つ目は以下のもの。

本研究は下記の記事でxevra氏により引用されている。

原文を読んでみると、「島皮質のシワの量と瞑想の経験年数には正の相関が見られる」と記載がある。シワが多いほど脳細胞同士のやりとりが高速に行えるようなので、対象を島皮質に限定すれば「脳の働きが速くなる」というのは事実だろう。*2
しかし原文には「大脳皮質に関しては今後研究が必要」*3とも記載がある。島皮質とは脳のごく一部であり、大脳皮質に関する事実は少なくともこの論文にはない。我々の脳の皮質の大部分を占める大脳皮質には「瞑想で脳の働きが速くなる」という事実はないのだ。にも関わらず瞑想で脳の働きが速くなるというのはあまりにも誤解を招く表現ではないか。

瞑想をした人とニセ瞑想をした人の脳波と血液に関する研究

言及したい研究の2つ目は以下。

xevra氏はいつものように上記記事に「瞑想は必須スキル」とブコメし、沢山のスターを獲得している。
本記事では大々的に「瞑想は科学的に脳を変える」とあるが、研究によりわかった事実は下記の2つだけである。

  • 脳のストレス耐性に関連する部位が活性化した
  • 血液検査で炎症のレベルが低い

これには瞑想で人生がよりよくなる!という説得力はないだろう。なぜなら、1点目に関しては、ストレス耐性に関連する部位が活性化した、というのはストレス耐性が高まったと言えるのか?という疑問がある。例えばうつ病になる人が○%減る!などのようなレベルまで言えないと強い確信にはつながらない。
2点目に関しては、我々は血液検査での炎症のレベルを下げたくて瞑想するのか?という疑問がある。あなたは自分に関係があるのかないのかよくわからない数値を下げるために瞑想を継続できるだろうか?そがどう健康を改善するのかまで明確でないと瞑想に対するモチベーションは上がらないだろう。

まとめ

私が知りたいのはあくまで瞑想に関する真実だ。xevra氏の評判を落としたい訳でも瞑想を否定したい訳でもない。瞑想で本当に人生がよりよくなるのであれば是非継続的に実施したい。xevra氏やはてな村の皆さんがもっと他の"瞑想で人生がよりよくなる!"と思えるような実験事実を提示してくれることを願っている。

*1:ユーザーイリュージョンという言葉で表される「意識は無用な随伴現象だ」と捉える研究者もいる。ここで指摘にしたいのは、「xevra氏が引用した本の内容」と「xevra氏による本の概要」が全く正反対のことを言っていることである。

*2:因果関係が逆で、島皮質のシワの量が多い人が瞑想をするかもしれない、ということに関しては検証されていないように思う

*3:2012年の研究のため、2016年現在では既に大脳皮質に関する研究がなされている可能性がある